毎年9月4日は『古酒の日(くーすのひ)』。例年なら沖縄でも色んな場所で古酒イベントが開催されます。ちなみに『古酒』とは、3年以上熟成させた泡盛をそう呼びます。甕や瓶に入れて「寝かせる」ことで、香りは芳醇に、味わいはまろやかになっていくのです。しかし素晴らしい古酒を育てるには、ただ「寝かせる」だけではダメなんです。
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場所は名護市天仁屋。そこに「黙々100年塾 蔓草庵」はあります。
大自然に囲まれた広い敷地には小川が流れ、沖縄の花々や草木がイキイキと育っています。この「曼草庵」は泡盛仙人と呼ばれる島袋正敏(せいびん)さんという方が、4年の月日を費やし手作りで作られました。「黙々100年塾 蔓草庵」の名の通り、「黙々と100年200年かけてこの工房を造り続けていく」「まだ完成していない」と正敏さんは仰っています。
敷地内にあるこの松は『底仁屋の御神松(スーナのウカミマーチ)』と呼ばれるリュウキュウマツで、名護市の天然記念物にも指定されています。推定樹齢220年~250年。高さは約10m、地上1mでの幹の直径は145㎝、幹の周囲は455㎝もある立派な御神松。さぁ島袋正敏さんに会いに行きましょう!
この建物の中にいらっしゃるようです。もちろんこの建物も島袋正敏さんが作ったもの。私はこの建物の中に入った瞬間、驚きのあまり声が出てしまいました。
この方が泡盛仙人でもあり蔓草庵主宰、元名護博物館館長であり、山原島酒之会会長などもされてこられた、ヤンバルを知り尽くした人物島袋正敏さん。そして正敏さんの後ろには酒屋のように並ぶ泡盛(笑)その数に驚き思わず声が。
新しいものから今では手に入らない泡盛まで。これだけではありません。
泡盛ボトルの数を聞くと「7000本までは数えたが、それ以上は数えていない。恐らくそれ以上あるだろうね~」と(笑)
そして正敏さんが長年かけて育てている古酒甕。約40個貯蔵しているそうです。圧巻としかいいようがない(笑)泡盛好きにとってはお宝の山ですよ!
最初に触れましたが、泡盛は「寝かせる」だけではいい泡盛には育たないのです。いい泡盛に育てるには「仕次ぎ(しつぎ)」という作業がとても重要になってきます。「仕次ぎ(しつぎ)」とは「仕事を次へ」という意味があり、泡盛を熟成させるためには、1年に1度、古酒甕の泡盛を1割ほど汲み取り、その汲み取った古酒甕の中に新しいお酒を継ぎ足します。
正敏さん曰く、古酒甕を3つ用意して、15年もの、10年もの、5年ものがあるとすると、15年ものから1割汲み取り、汲み取った古酒をありがたく嗜む(たしなむ)。そして1割汲み取った15年ものの泡盛の甕に10年ものの泡盛を継ぎ足す。少なくなった10年ものの泡盛には5年ものを継ぎ足す。5年ものには新しいものを継ぎ足す。この作業を「仕次ぎ」と言います。この仕次ぎをすることで古酒化が進み、より良い古酒になるんです。
正敏さんの元へはこういった相談も持ち掛けられるそうです。ある年配のご夫婦がいて、ご主人が先に他界し、家に残された大量の泡盛。亡くなったご主人にしてみれば大切な泡盛だけど、残された奥様にとっては処分に困るだけ。その大量の泡盛をどう処分すればよいのか・・・という相談を持ち掛けられました。正敏さんはそんな泡盛を引き取り、年に一度オークションを開催されています。
昔の人は「家の鍵を人に預けても、古酒蔵の鍵は預けない」と言っていたほど、古酒にはお金に換えられない価値があったそうです。戦争で、100年以上ものの古酒はもうほぼなくなってしまいましたが、正敏さんは「自分の孫に100年ものの古酒を飲ませてあげたい」と仰っており、古酒づくりに励んでいらっしゃいました。
さぁ9月4日の「古酒の日」には、美味しい泡盛の古酒で乾杯しましょう!
住所:沖縄県名護市天仁屋