美しい海に囲まれた久米島。そこには海だけでなく、たくさんの植物、久米島固有の生物が生息する大自然の深い森があります。そのひとつが、久米島の北西部にある宇江城岳(うえぐすくだけ/標高約310メートル)を源流とする「ニブチの森」です。そのニブチの森を地元ガイドの方と一緒に歩いてきました。
「ニブチの森」は、2008年にラムサール条約に登録され、渓流、湿地帯で、面積は2.55k㎡、島全体(59k㎡)の4.3%を占めています。オキナワスダジイ、オキナワウラジロガシなど森林や河畔林が発達し、良質な水が渓流として流れ、世界で久米島だけにしか生息していなくて、絶滅の恐れがあり、沖縄県の天然記念物に指定されている「キクザトサワヘビ」をはじめ、久米島ボタルやクメジマミナミサワガニなど固有種の重要な生息地になっています。
今回、ニブチの森を案内してくれるのは、久米島出身久米島在住、マンゴー農園を営む島の学校久米島の保久村昌欣(ほくむらしょうきん)さんです。
久米島は昔、このあたり一帯が田んぼだったため「球美の島(くみのしま)」と呼ばれ、「球美」とは、「米」を意味し、そこから今の「久米島」となったそうです。今では一部の集落でしか作られていないお米ですが、その昔は「米」作りが盛んで、1700年代、米を作るための水を確保するに作られたという人口のため池があり、そこからニブチの森散策がスタートしました。
ニブチの森は、ため池のわきの道を入っていきます。
道なき道を歩くかと思いきや、道はしっかりしていました。数年前から歩きやすいように整備されています。
ニブチの森を散策しながら、この森に自生する植物について色々教えてくれます。
イジュの木の樹皮には毒があり、昔は樹皮を細かく粉末状にして撒き、魚を採っていたみたいです。沖縄では5月頃イジュの花が咲き、ほのかな香りで白い美しい花です。ちょうど沖縄の梅雨入りの時期に当たるので、イジュの花が咲くと梅雨入りと言われたそうです。
クバの葉は、うちわにしたり、泡盛に巻いたり、器を作ることもできます。
沖縄の生活の知恵ですね。
保久村さんに「私より前に出るな」と注意されました。久米島にはハブが出ます。
しかし保久村さんがハブを見つける名人なので、先頭を歩いていれば心配ないとのこと。暖かい沖縄では、冬のハブの動きは多少鈍いものの、冬眠しないらしいです。
「木にできたコブ」
台風などで枝が折れて穴が開いてしまった木は、このままだと穴に水が溜まって腐ってしまうので、木が自ら、長い時間をかけて自分の自然治癒力で穴をふさごうとし、このようなコブができるのだとか。
何気なく見過ごしてしまうことにも、すべて、意味のあることだと、自然が教えてくれています。
道を外れ、ここから少し下りていきます。
この穴はなんでしょう!?
戦時中には防空壕として、ここで生活していたそうです。
森の動植物のことだけではなく、沖縄や久米島の歴史、文化の事も教えてくれました。
沖縄のお墓、沖縄式線香とあの世で使えるお金、島での習わし、行事等々、色々なお話を聞く中で、島人の生き様を垣間見たような気がします。案内人の保久村さんのお話と共に、自分の足で森を歩き、感じ、気づくこと。
普通に旅しただけではわからないことが、このツアーに参加することで見えてくるものがたくさんありました。
今回は出会うことができなかったのですが、天然記念物に指定されているリュウキュウヤマガメなども見られるそうです。最後はキノボリトカゲに出会うことができました。
おもむろに保久村さんが草をちぎって、草笛を吹いてくれました。
「ふるさと」です。
ニブチの森で保久村さんの久米島人としての誇りや思いが、草笛と共に心に響いてきました。
そして、この日は特別に保久村さんのご自宅で珈琲タイムをさせていただきました。
わー素敵!これぞ沖縄伝統家屋の古民家です。
縁側に座って、奥様が淹れてくれたバニラフレバーの美味しい珈琲と黒糖をいただきました!
なんだろう、この島タイムは。島ならではの至福の時間です。
出迎えてくれた猫ちゃんは、わざわざ外までお見送りに来てくれました。なんていい子なんでしょう!
ツアーは森の中をゆっくりと2時間ほど散策します。
参加される方は、歩きやすい靴と服装で、お水などの飲み物を持参しましょう!
TEL098-851-7973
(久米島町観光協会9:00~17:00)
※前日17時迄に要予約
※天候によっては中止(当日に判断)
◉島の学校体験プログラム「ニブチの森散策ツアー」
所要時間:2時間半
料金:お一人様4,000円 小中学生2500円
準備品:汚れてもいい服装・スニーカー、運動靴などの足を保護できるもの・熱中症対策・タオル・飲み物・虫除け・天候により雨具
体験レポーター:青木さなえ・MAYA