現代版組踊「肝高の阿麻和利(きむたかのあまわり)」は、中高生による奇跡の舞台と言われている。20年続いて、総観客動員180万という「肝高の阿麻和利」。初代演出家・ダイナミック琉球の作詞者でもある平田大一さんにより、地域の子ども達の居場所づくりを目的にうるま市で始まった取り組みです。「肝高の阿麻和利」東京公演を控える平田大一さんに伺いました。(インタビュー:青木さなえ・東京で行われた「沖縄ファンの集い」より。)
20年前、小浜島を拠点に様々な活動をしていた平田さんに沖縄県勝連町(現うるま市)から舞台演出の依頼のお声がかかります。
郷土の偉人である阿麻和利は、琉球古典では悪者として描かれているが、それを英雄として描こうということで、中学生がその史劇を演じ、新しく平田さんがアレンジした現代版組踊「肝高の阿麻和利」が誕生したのです。
現代版組踊とは、伝統的な「組踊」をもとに、現代的な「音楽」「舞踊」「台詞」の3つの要素で構成された舞台様式です。
この日は沖縄ファンの集い(沖縄ファンクラブ主催)の中でPR公演、OB、OG達の手によりその素晴らしいステージの一端を披露していただきました。
当初は数人しかいなかったそうですが、出演希望者が増え、不登校の子も参加するようになり、地域の子供たちの居場所になっていったそうです。
その後、文化活動を通した青少年の「人材育成」と「地域興し」の新たな手法として、沖縄県内のみならず、いまや全国へと活動の輪が広がり、その共通のテーマソングが平田大一さんが作詞した「ダイナミック琉球」になったそうです。
◉「ダイナミック琉球」…元々は2008年琉球大学の土木工学科の創立50周年記念の組踊絵巻のテーマソングとして作られた楽曲。
【次回公演情報】
現代版組踊20年記念事業 組踊上演300周年記念共催事業
『現代版組踊 肝高の阿麻和利』
2019年8月10日(土)
【昼公演】開場 12:30 開演 13:00
【夜公演】開場 17:30 開演 18:00
会場:茨城県小美玉市 四季文化館みの~れ 茨城県小美玉市部室1069
2019年8月12日(月・祝)
【昼公演】開場 11:30 開演 12:00
【夜公演】開場 16:30 開演 17:00
会場:東京国立劇場 大劇場 東京都千代田区隼町4-1
2019年9月21日(土)22日(日)
〈21日(土)〉ゲスト:宮沢和史
【昼公演】開場 12:30 開演 13:00
【夜公演】開場 17:30 開演 18:00
〈22日(日)〉ゲスト:イクマあきら
【昼公演】開場 11:30 開演 12:00
【夜公演】開場 16:30 開演 17:00
会場:うるま市民芸術劇場 響ホール 沖縄県うるま市字仲嶺175
脚本:嶋 津与志 初演オリジナル演出:平田 大一 演出:藏當 慎也 音楽監督:寺嶋 トモヒロ 舞台監督:津嘉山 弘
主催:あまわり浪漫の会
上記公演のチケット入手方法は、現代版組踊「肝高の阿麻和利」公式HP公演情報をご覧ください。
ある時、平田大一さんの元に1本の電話がかかってきたそうです。
それは、当時の沖縄県知事ご本人から文化観光スポーツ部の部長になってくれと。
その後、平田さんは初代文化観光スポーツ部長に2年間就任します。
事業計画は面白い台本、人事は役者のキャスティング、事業の予算は舞台予算。「現代版躍奉行」と称し、行政の取り組みと舞台づくりを重ねて、事業計画を具体的なストーリーになぞり、より説得力のあるものにするよう職員を指導したといいます。
これは長年舞台づくりをやってきた平田大一さんにしかできない発想です。
平田大一さんにいただいたプロフィールを見てるとこの他にもたくさんあります。
沖縄県文化振興会の理事長就任、退任と同時に沖縄文化芸術振興アドバイザーとして世界と沖縄をつなぐ活動を展開、文化に軸足を置いた新たな地域活性化のモデルづくりのトップランナーとして走り続け、2014年には琉球古典音楽芸能公演「人間国宝結ぶ御縁」において天皇・皇后両陛下への解説役の重任も任されたそうです。
またTHE BOOMの宮沢和史氏と共に「くるちの杜100年プロジェクト」や「唄方プロジェクト」などの活動も行っているという。平田大一さんのこれまでの人生、休むことなく次から次へと挑戦しているのがよくわかりました。
いや、そんな簡単なことじゃないはずです。
理想や夢は語れても、それを行動に移し、現実にしている人はなかなかいません。
この行動力と強さの源は琉球の島の魂を感じました
これからも「行動する詩人」として挑戦しつづけていくことでしょう。
小さな時から、沖縄の楽器である三線、横笛、太鼓、琉球の踊りや歌が当たり前にあった環境だったといいます。
大学一年の時、自らが書きためた詩の朗読ライブがはじまりで、一人で詩の朗読だけでは間が持たないということで、1部「語り」、2部「横笛、三線等の演奏」、3部「宴会芸」の三部構成で4時間の独り舞台をやっていたそうです。
音楽やパフォーマンスの三部構成にしても、4時間独り舞台だなんて凄いです。どれだけのエネルギーを使うんだろうと想像を絶します。
小浜島で覚えた芸能を総動員して、「詩を語り、詩を奏で、詩を舞い、詩を演じ」、こうして南島詩人が生まれたそうです。
学生時代から舞台活動をし、芸術の道を歩き始めていた平田さんは、大学を卒業後、小浜島に戻ったそうです。
その理由、それは、東京で活動を続けるということが疑問に思ったからだと言います。
小浜島で生まれた芸術を、小浜島から発信したかったそうです。
詩、笛、太鼓、三線、舞を駆使した学校講演を1900校近く実現し、またお父さまのキビ刈り農場で「小浜島キビ刈り援農塾」を主催し、また実家が民宿をやられていたこともあり、全国の若者に農業体験ができる宿屋も運営されたそうです。
そう、それが「うふだき荘」という民宿。
私も小浜島の集落を歩いていて、少し大きな家で、お庭があって、縁側あって、何だか田舎のおばあちゃん家に遊びに来たような素敵な宿だなと思いながら写真に収めてました。
(平田さんのご実家の民宿うふだき荘)
ちなみに、それと時を同じくして「小浜島ばあちゃん合唱団」も立ち上げていたそうで、これが後の「KBG84(※1)」になったというわけです。
(フェリー乗り場にて、びっくりのポスター)
【平田大一氏 主な著書】
「詩集 南島詩人(1994年/富多喜創)」「歩く詩人(2000年/富多喜創)」
「キムタカ!~舞台が元気を運んでくる(2008年/アスペクト社)」
「南風 海風に吹かれて(2008年/かんき出版)」
「シマとの対話(2009年/ボーダーインク)」その他
住所:八重山郡竹富町小浜52(小浜港から車で5分)
TEL:0980-85-3243